漢方豆知識
肩こりに葛根湯が効くのは
葛根湯は、傷寒論太陽病中編に記載されています。項背強と書かれていて、これは首筋から背中にかけてこわばりがひどく反り返るような形を表しています。これを肩こりの症状として取れば効くことになります。
この病理は、中風という風によって足の太陽脈の栄衛という気が損害を被りもとにもどらなくなってしまい病んで起こる症状です。強ばりを生ずる理由は、経脈(栄気)の働きの一つに筋肉を潤して和らげることがあり、それが出来なくなることにより筋肉が乾いて固くなって伸びづらくなることによります。足太陽経は頭から背中にかけて巡っていますから首筋から肩にかけてこわばりを生じます。
ゆえに、風に当りすぎて肩こりを生じた人には葛根湯が効くことになります。
しかしながら、現代では風に吹かれることも少なく、食生活も豊かで風によって経脈までが冷やされることは稀であり、中風からの肩こりは考えづらく他の原因を考えた方が当たる確率は高いでしょう。
また葛根湯は、発汗薬ですから血虚(血が少なかったり冷えて弱っている状態)である人は、かえって害になることがあるので気を付けましょう。(丈夫そうな人でも血虚を起していることがあります)
漢方家の疑問
風は衛を傷るといわれていますが、なぜ栄衛がともに傷られることがあるのか。
太陽の中風に頭項強痛ととありますが、項背強との病理の違いは。
便秘は病気
霊樞という書に人は一日に二度大便をすると書いてあります。大便は、余分なものを排泄する目的以外に人体中の気の流れをコントロールするための重要な役割を持つ。六腑の一つに三焦というものがあり、下焦という下腹部で働く気は大小便の排泄を調節することで経絡の気血の流れをスムーズにしています。
便秘になるとこの下焦の働きが悪くなり経絡に害を与えることになります。また経絡に障害が生じて下焦が働くなることで便秘になることもあります。いずれにせよ便秘とは体の中で異変が生じているものとみてよいでしょう。
便秘の原因には、大きく分けると寒熱に分けられます。熱の場合は府(消化管)のところに余分な熱が残ることにより乾きを生じて大便が固くなってとうりが悪くなります。寒の場合は血が冷えることで大便を出す力がなくなります。
熱のときは、余分な熱を移動させて更に潤いを持たせれば大便は出るようになります。寒の場合は、冷えている所に温かい血を持ってきて温めれば大便を出す力が補えます。
世間で売られている漢方便秘薬は、熱に対する処方が多く寒による便秘の人は、一時よくても後に害が生ずることがあるかもしれないので気を付けて飲んだ方がよいでしょう。
漢方家の疑問 陽明病における下之と陰病の府に入りての下之とのつながりは。 大便を出すために働くにはどこの気。
漢方は免疫を高めるものではない
免疫を東洋医学で考えると五行説がわかりやすい。五行説とは、簡単に言うと自然界は五つの要素(木火土金水)によって成り立ち、相生(互いに生じあう働き)、相剋(互いに殺しあう働き)により均衡が保たれているという理論です。
例として、木生火とあり、木が燃えることで火が作られる、火生土は日によって作られた灰が土になる。これを相生と言います。木剋土とあり、木は土から養分を吸って育つ。水剋火は、水は火を弱める。これを相剋と言います。
相生と相剋は、人の体の中でも行われていて、これを免疫と言ってよいでしょう。この働きがあることで常に均衡が保たれて病気にならないようになっています。
病気になるときは、この相生と相剋は既に機能しなくなっていて元に戻る力もないから病んでしまうのです。漢方は、この五行の働きをどうにかするのではなくて、経絡という五行の本となる陰陽を治療するのです。(陰陽論はすべてのもとです)免疫の土台となるところを治すのが漢方薬です。
近代医学では、免疫を研究して治療に役立てようとしていますが、五行の範囲にとどまるので、一時的にはよいかも知れませんが根本を治すのは難しいのではないかと思はれます。
漢方家の疑問 陰陽論と五行説の関係は。 相生相剋による免疫とは何か。
漢方薬はどんな病気を治せるか
原則として、漢方薬はすべての病に対応します。東洋医学の基本は、経絡です。経絡を病んだものならば、経絡を治す漢方薬は効果があります。臓腑や他を病んだ場合でも経絡を使うことで、漢方薬で治すことができます。ただし、蔵の體を病んだ場合は、漢方薬でも治すことはできません。
例えば、がんなどでも胃や大腸などの府を病んだ場合は、漢方薬でも治すことができます。五臓に転移した場合は治せません。しかし、病状を楽にしたり、がんの進行を遅らせることはできるようですまた、最近増えてきている心の病に至ってはかなりの確率で効果が出せます。現代医学では治すことのできない難病であっても試してみる価値は十分にあります。
心の病は治せるか
いま増えている心の病とは、西洋医学では、精神のストレスが原因としたり、脳内の伝達物質の異常によるものとされています。東洋医学では、それらは関係なく、臓腑の疲れから発しているとします。藏は精神魂魄を治めるとし、この働きが弱ると精神魂魄は正常でなくなります。それにより、うつ病や発達障害などの病気を引き起こします。漢方で治す場合は、この疲れた臓腑を経脈に因り元に戻すことで精神魂魄の働きを正常にします。蔵が病んだわけではないから時間はかかるかもしれませんが、経脈を整えればよいだけで完全に治すことは可能であると思えます。使う経脈も限られていますから、難しいことではありません。